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おなか


入院生活というものは本当に規則正しくて
6時起床、検温と血圧と問診に看護婦さんがやってきます。

8時に朝御飯。9時から先生の回診。
それが終わるとダスキンさんが来てお部屋のお掃除をしてくれたりします。

12時にお昼御飯で、その後、また検温と血圧と問診。

6時に晩御飯で、またまた検温と血圧と問診。
9時に消灯です。

毎日3回、検温と血圧を測ると看護婦さんは「ハイ、お腹を見せてくださいね」と言い
私のお腹をさわって「お腹は柔らかいですね・・」と言い(硬いといけないらしい)
それから聴診器でぽん、ぽん・・と、私のお腹の音を一生懸命に聴きます。
なんだか、その様子がなんとなく
昔っぽくて、面白くて、私は笑ってしまいます。

回診のときも外科や内科や消化器科の色々な先生がやってきては
「お腹をみせてね」
と言っては私のお腹をさわって
「痛い?痛くない?」と聞きます。

一体何十回私はおなかを見せたのでしょう。

私は「お腹をみせて」って言われたら
もう誰にでもお腹を見せてしまいそうです。(*^。^*)

そして流動食から五分粥になったとき
朝の回診で先生に言いました。
「先生、もう点滴はいらないです。御飯は毎食一粒残さず全部食べているし
お茶は8杯位飲んでます。水分は十分足りてるし、もう平気。」

先生は「そう・・?点滴っていいのよ~・・。なんてウソウソ!
わかった。じゃ、全部はずして!」
と横にいる看護婦さんに言いました。

この点滴と抗生物質の薬の2本立ては、はじまってまだ3分位だったので
看護婦さんが、びっくりした顔で
いいんですか?と言うと
「うん、いいから全部破棄して」
と先生が言いました。

この先生、話がわかるじゃん!ヽ(^。^)ノ
私は、ベットの上に正座をしてさらに言いました。

「先生、私はもう帰ります。おかげさまですっかり治ってきました。
いつか必ず鶴の恩返しに参りますので、わたしをもう外に出してください。」

「もう帰る?」
「ハイ、あした。」

「明日・・明日はまだ帰らないで。
お願いだからもう一日だけいて。」

「?」

「だって・・まだ5分粥がはじまったばかりでしょう?
本当のお粥にして、せめてあと3回食べて行って。
もう一日だけ体を休めてください。
それから最初は本当にもう、あまりにもひどすぎたんだから
まだまだ体は回復してこないはずなんです・・。心配だし・・
だから退院しても1週間したら、CTや採血の検査に来てくださいね。
それから、その1週間の間に何かあったら、すぐに僕のところに来てくださいね。」

まだ30代くらいの若い先生だけど
頭がすごく良くて、権威をふりかざさない、
とても優しい先生だということはもうその日までに十分わかっていたけれど
やっぱり本当にいい先生だったのだなぁ・・と思いました。

「わかりました。もう一日います。
お家に帰ったら、すぐに私は大掃除をしなくちゃならないので・・
もう戦場ですから。だから、しっかり体力をつけていくことにします」

先生は「ありがとうございます」と言いました。
私は「私こそ、先生ありがとうございます」と言いました。

そして晴れて点滴の針がはずされた私は
「やった~~!!」と万歳しました。
体に針が刺さっていないというのは、なんて最高なことでしょう!!

とりあえず私は切腹もまぬがれて、一番嫌いな注射もはずされて
それだけでもう、最高に幸せでした。
by tukurokka | 2009-05-23 14:54